肩関節の石灰沈着(石灰沈着性腱板炎)は、肩の腱板にカルシウムが沈着して炎症を引き起こす疾患です。治療を受けて痛みが軽減した後も、適切なケアを行わなければ再発のリスクがあります。この記事では、回復後の注意点や生活習慣、リハビリ方法を詳しく解説します。

1. 肩を急に酷使しない

痛みが軽減すると、つい普段どおりに肩を使いたくなります。しかし、急な動作や負担のかかる動きをすると、炎症が再発する可能性があります。まずは日常生活で以下の点に注意しましょう。

避けるべき動作

急に腕を高く上げる動作(例:棚の上の物を取る)
重い物を持ち上げる動作(例:買い物袋を片手で持つ)
長時間の同じ姿勢(例:デスクワーク、車の運転)
反復的な肩の使用(例:掃除機の使用、窓拭き)

肩に過度な負担をかけず、徐々に可動域を広げることが大切です。

2. リハビリとストレッチを取り入れる

炎症が落ち着いても、肩の可動域が制限されたままの状態では、再発のリスクが高まります。適切なストレッチや運動を取り入れて、肩の柔軟性を回復させましょう。

おすすめのストレッチ

  1. 振り子運動(肩のリラックス)
    • 体を前傾させ、腕を垂らして小さく円を描くように動かす(左右10回)
  2. 壁押しストレッチ(肩の可動域向上)
    • 壁に手をつき、ゆっくり体重をかけながら肩を伸ばす(15秒×3回)
  3. 肩甲骨回し(血流促進)
    • 肩を大きく回す(前後10回ずつ)

ポイント

  • 痛みを感じたら無理をしない
  • 深呼吸しながらゆっくり行う
  • お風呂上がりに実施すると効果的

3. 肩を冷やしすぎない

血流を良くすることで、回復が早まり、再発防止にもつながります。炎症が強い時期には冷やすことが有効ですが、痛みが引いた後は温めることが重要です。

おすすめの温め方

入浴で温める(ぬるめのお湯で10~15分)
蒸しタオルを肩に当てる(40℃程度)
ホットパックを活用する

注意点

  • 冷房や扇風機の風が直接肩に当たらないようにする
  • 痛みがぶり返した場合は、一時的に冷却療法を検討

4. 石灰化とカルシウム摂取の関係と注意点

石灰沈着性腱板炎は、カルシウムが異常に沈着することで発生しますが、これを防ぐためにカルシウムの摂取を極端に制限する必要はありません。むしろ、適切なバランスでカルシウムを摂取し、体内での正しい代謝を促すことが重要です。特に、カルシウムと他の栄養素との関係を理解し、食事の質を向上させることが鍵となります。

カルシウム摂取のポイント

必要な量を適切に摂取する(不足も過剰も避ける)

  • 成人の1日のカルシウム推奨摂取量は600〜800mg程度。
  • 乳製品(牛乳・チーズ・ヨーグルト)や小魚、豆腐、ナッツ類などから摂取する。

カルシウムの吸収を助ける栄養素を一緒に摂る

  • ビタミンD(カルシウムの吸収を促進):鮭、サバ、イワシ、卵黄、きのこ類
  • マグネシウム(カルシウムの過剰蓄積を防ぐ):ナッツ類、海藻類、玄米、大豆製品
  • ビタミンK(骨や関節の健康を維持):納豆、ブロッコリー、ホウレンソウ

過剰なカルシウム摂取に注意

  • カルシウムを過剰に摂取すると、腎臓結石や血管の石灰化リスクが高まる。
  • サプリメントよりも食事から自然な形で摂取するのが望ましい。

加工食品に多く含まれるリンの影響

加工食品に多く含まれる**リン(リン酸塩)**は、カルシウムの吸収を妨げる要因のひとつです。リンを過剰に摂取すると、カルシウムとのバランスが崩れ、骨や関節に悪影響を及ぼす可能性があります。

リンを多く含む食品を控える

  • インスタント食品、スナック菓子、ソーセージ、ハム、ベーコン、清涼飲料水
  • 市販の加工肉やファストフードには、保存料としてリン酸塩が多く使用されている。

リンの摂取を抑えつつ、カルシウムのバランスをとる

  • 自然な食材を選び、できるだけ加工されていない食品を摂取する。
  • 野菜、果物、魚、ナッツなどの天然食品を中心にした食生活を心がける。
  • カルシウムとリンのバランスを考え、加工食品を避けることで、石灰化のリスクを低減する。

適切な食生活を意識することで、カルシウムの正しい代謝を促し、肩関節の石灰沈着のリスクを軽減することができます。

石灰沈着性腱板炎はカルシウムの異常沈着が原因の一つとされていますが、カルシウム摂取を過度に制限する必要はありません。むしろ適切な摂取とバランスの取れた食生活が重要です。

5. 正しい姿勢を維持する

姿勢の悪さは肩への負担を増やし、炎症の再発リスクを高めます。日常的に正しい姿勢を意識することが、肩の健康を守るために重要です。

意識するポイント

デスクワーク時

  • 肘をデスクやアームレストで支え、肩がすくまないようにする。
  • 背筋を伸ばし、猫背にならないようにする。
  • パソコンのモニターは目線の高さに設定する。

座る姿勢

  • 椅子に深く座り、骨盤を立てる。
  • 頭が前に出ないように意識する。

寝るときの姿勢

  • 横向きの場合、肩の圧を減らすためにクッションを抱える。

6. 生活習慣を見直す

肩関節の石灰沈着性腱板炎を再発させないためには、日常の習慣を見直し、負担を軽減する工夫が必要です。特に、肩に余計なストレスをかけないための工夫を意識することが大切です。

改善すべき生活習慣

荷物の持ち方に気をつける 片方の肩ばかりに負担をかけると、筋肉のバランスが崩れ、肩の負担が増えます。リュックサックなど両肩に均等に負担を分散できるバッグを使用することをおすすめします。どうしても片方の肩にバッグをかける必要がある場合は、こまめに肩を入れ替えるようにしましょう。

日常的な運動を取り入れる 肩の可動域を維持し、血流を促進するためには、軽い運動を継続することが重要です。例えば、朝のストレッチやウォーキングを習慣にすることで、肩や上半身の筋肉をほぐし、関節の柔軟性を高めることができます。また、肩を動かさない状態が長く続くと筋肉が固まりやすいため、仕事の合間に軽い肩回しやストレッチを行うのも効果的です。

長時間のスマホやパソコン作業を控える スマホやパソコンの長時間使用は、姿勢の悪化を招き、肩への負担を増加させます。特に、前かがみの姿勢が続くと、肩甲骨周りの筋肉が過緊張を起こし、血流が悪化する可能性があります。30分に一度は画面から目を離し、軽いストレッチや姿勢を正すことを意識しましょう。

睡眠環境を見直す 就寝時の姿勢も肩への影響が大きいため、寝具選びを工夫することが大切です。枕の高さが合わないと、肩や首に負担がかかりやすくなります。適度に高さのある枕を選び、仰向けで寝る際には首の自然なカーブを維持できるように調整しましょう。また、横向きで寝る場合は、抱き枕を使用して肩への圧迫を減らすと快適に眠ることができます。

ストレスを軽減する 慢性的なストレスは筋肉の緊張を招き、肩への負担を増やす要因となります。適度な運動や趣味の時間を設けることでリラックスし、ストレスを解消することが大切です。特に、深呼吸や瞑想を取り入れることで、副交感神経が優位になり、筋肉の緊張がほぐれやすくなります。

生活習慣を見直し、肩にかかる負担を減らすことで、石灰沈着性腱板炎の再発を防ぎ、快適な日常を送ることができます。

再発防止のために、生活習慣を見直すことも重要です。無意識に肩に負担をかけていることが多いため、日常の動作にも気をつけましょう。

まとめ

急激な肩の使用を避ける(特に重い物や高い所の作業を控える)
適度なストレッチと運動を行う(可動域を広げる)
肩を冷やしすぎず温める(血流を促進)
石灰化とカルシウム摂取の関係を理解する
正しい姿勢を意識する
生活習慣を見直す

痛みが引いた後も、適切なケアを続けることで肩の健康を守ることができます。日々のケアを意識し、再発を防ぎましょう。